その日は地元の花火大会、しかも大好きだった女の子を誘った所なんとOK!
朝からドキドキワクワクだった。
昨晩の電話で彼女は浴衣を着てくると言う、最高だ、人生最良の日である。
待ち合わせ場所のファミレスまで自転車で向かったが、早くつき過ぎた・・・・
まだ待ち合わせの6時まで30分近くある。俺焦り過ぎ・・・
ま、いいかと思いながらベンチに腰をかけ、ちらほらと目に付き始めた浴衣姿の女の子たちを眺めていたんだ。
と、その時
地面をのたうち回る、いったいなんだ?何が起きた?
訳が解らないまま襟首を掴まれ車のトランクに押し込められた。
暫くして、痛みは引いたのだが(それでも顔面は痺れたまま)真っ暗なトランクの中で
身体も不安定、平衡感覚がなくなりパニック状態、いつまで走るんだろう?
今どこなんだろう?そもそも何で俺こんな事になってんだ?なんにもした覚えはない。
とにかく恐い。
トランクから引きずり出される、と、すぐさま蹴られ、あげく角材で殴られた。
ゴルァァァ!!とかウルァァァ!!とかヴォグエグワァァ!!とか言う雄叫びを日本語に変換すると
どうやらシッコチビッタのとゲボ吐いたことへの制裁らしい。
俺はもうどうする事もできずにされるがままだった。
ただ回りに鉄骨やらドラム缶があることから工場らしい事だけが分かった。
制裁?が終わると柱に立ったまま括り付けられ暫く放置、
暫くしてから思い出したように小突かれる。
それが何度か続いた、なんとなく死んでないか確認してるんだなと思った。
顔から地面に滴っていた血は止まったが顔がやけに熱かった。
突然、花火大会のことを思い出す、約束やぶってごめん、
でももう会えないかも知れないよ、と思うと
涙が溢れて止まらなかった、そのままガキみたいに泣き喚いた。
喧しいぞ!ゴルァ!!と三白眼のチンピラに殴られたが余計に大声で喚き続けた。
とたんにチンピラが「オツカレサンッス!!」と頭を下げた、
キッチリとスーツを着たやせ形とゴッツの二人組、
ここで始めてどうやら893の方に拉致された事が分かった。
やせがくわえたタバコにゴッツが火を付けている、やせの方が偉いらしい。
やせがゴッツに耳打ちをしている、ゴッツはうなづいて俺に向かって歩いてくる。
ギャ〜〜!ヤ〜メ〜テ〜〜〜!!殺さないで〜〜〜〜!!
必死にもがく俺、ゴッツは「大人しくしろ。」といってロープをほどこうとするが、
俺が暴れるのでうまく解けない、ジタバタしていると、どこからともなく
「ゴンッ!!」と音がした。
吃驚して音のした方角を見ると、チンピラが頭から血を流して倒れている・・・・
もう訳わかんない、なんなの?いったい?
チンぴらは頭から血を流してグッタリしている、どうなってんだ?と思っていると
やせが「どうする?頃してもいいぞ。」と言ってきた。
ハァ?イヤ・・・ソンナ・・・イイデス・・・・と言うと、
「そうか、じゃ、これで落とし前ってことにしてくれや。」と言い、おもむろに
バキッッ!!ベキッッッ!!とチンピラの両手を折ったんです。
チンピラはウワァァァァァァァァァァァ!!ギィヤァアァアァアァ!!とのたうち回っている。
俺が呆然と見ていると、やせがゴッツに「先生のとこ連れてけ」と言って
俺は病院に連れて行かれました。
変な事に感心しているとゴッツの人が「ずいぶん、やられたな、まぁ乗れ。」と
車のドアを開けたが、一刻も早くこの場から離れたかったので「イヤ、イイデス」と言うと
「そういう訳にいかねんだよ。」と俺を押し込み車を走らせた。
着いた先はマンション(地元では通称ヤクザマンション)の一室でした、
一応病院らしいことは備品で判断できた。
怪我はいろんな所に打撲はあるが、骨は折れてはいないとのこと。
ただ、顔に何ケ所か裂傷があるため、縫合するという。
結局顔面を計25針も縫うはめになってしまいました。
さて、いくら893とはいえ訳も解らないままここまでされる筋合いはないと思い始めた時、
ずっとドアの脇に立っていたゴッツが口を開いた。
黙って帰す訳には行かないから話しておく、分かってるとは思うが、他言は無用だと。
で説明してくれたことはというと、
チンピラが黙ってヤセ893の車を持ち出して夜の店嬢と遊んでた、
で路駐してた場所まで帰ってきた所、禿しく10円パンチをくらっていた、
勝手に車を持ち出した挙げ句の10円パンチでテンパッタチンピラは犯人を適当に仕立て上げ
そいつから金を巻き上げようと少ない脳みそで考えたらしい。
で、たまたま目に付いたのが俺だったと・・・・ナニソレ・・・・・
結局夜の店嬢が同僚に話をしてるのを店の店員が聞き893に通報してバレたそうだ。
怒り心頭とはこの事かと、ヘタレな俺もこの時ばかりは893相手にメンチ切りましたよ。
そんなくだらん事で俺の顔はキズ物にされたのか?スカーフェイスか?
大好きなあの娘とのデートをぶち壊されたのか?やっぱり頃してきていいでつかと
今にして思えばあの時の俺の目は星飛雄馬だったろう。
あまりの怒りにワナワナしているとゴッツが俺の脇にポンッと封筒を投げ
「治療代と迷惑料だ、それ持ってッて今日の事は忘れろ、いいな」と言い出て行きました。
はぁ?と思い医者を見ると、医者は俺の目をジッと見据えて言った、
「言われた通りにしておきなさい、事故に遇ったとでも思って忘れる事だ、それが君の為だよ」と
あの恐怖と負った怪我に見合う金額なのかは疑問だったが、くれるってんならもらっとくかと
いや、貰う権利はあるんだと自分を納得させました。
幸い財布は拉致された時からずっとポケットに入ったままだったので身元は割れてはいないはずだ。
封筒をポケットにつっこんで出て行こうとすると医者は思い出したように言いました。
「もうここには来たくないだろうから、一週間経ったら自分で抜糸してね。
あと消毒は毎日ね、これ化膿止めと痛み止め毎食後ね、抜糸の仕方だけど糸切って引っ張るだけだから、じゃっ、お大事に。」
なんかしらんが「お世話になりました」と律儀に挨拶して帰途につきました。
帰るまでの間も今度は金を取りかえすために襲われるんじゃないかとビクビクしながら帰りました。
真直ぐは帰らずにわざと反対方向のバスにのったりしながら尾行の有無を確認、服に発信機(w)が
仕掛けられてるかもと服を購入して着替えたりしながらようやく家に着きました。
家に着いてからもいろいろと大変で修羅場だったが長くなるんでこのへんで終わりにしときます。
結果的に無断外泊になってしまったので、母親が「どこいってたの!!」
と凄い剣幕で飛び出してきました。でもまぁこれは予想どうりの展開だったんですが、
母が次の言葉を言う前に玄関から「イヤァ〜〜〜〜〜!!」という悲鳴が聞こえてきました。
嘘だろ!なんで『みお(仮名)』がいるんだよ!!!
どうやら時間になっても来ないので家に電話をしてきたところ、前日からの俺の浮かれっぷりを
知っていた母がおかしいと思い、それを聞いたみおも心配だからと家で待っていたと言うのだ。
当然みおからも母からも「何その怪我は!」「事故にでも遇ったの?」「どこの病院?」
「お金は?」「誰に?」「なんでそんな?」などなど質問攻め。まぁ当たり前ですが。
で俺は俺で「男には話せないこともあるんだよ!!」などと訳の分からんことを言ってとりあえず
自室まで避難、ワァワァドア越しに喚いていましたが諦めて階下に降りて行きました。
気配で分かったのですが、その間みおはドア越しに居たみたいでした。
ひとしきり泣いて落ち着いた俺はそういや幾ら入ってんだ?と封筒の中身を確かめました。
一目見た時からかなりの額だなとは思っていましたが、数えてみると
1,500,000円!!(((((((((゜Д゜))))))))))ガクガクブルブル
ヤッベー!マジヤバイッテ!!
今となってはチョト少なくない?と思ってしまうが高3のガキにしてみれば超大金です。
むこうからしてみれば「こんだけしてんだから、下手なことスンナヨ( ゚Д゚)ゴルァ!!」
ということなんでしょうか?
こんなお金親に見つかったら、母は893の事務所に返しに行くことは明白だったので
押し入れの天井裏に隠しましたよ。
と声をかけてきました。でドアを開けると開口一番「顔、2倍になってるよ。プッ」と笑ったんです。
あまりの屈託のない笑顔に釣られて俺も一緒に笑ってしまいました、もっとも次の瞬間顔面に
痛みが襲い掛かったのは言うまでもありませんが。
で、「言いたくないんだったら言わなくても良い、でもみんな心配してたんだからね。」
といって帰って行きました。
玄関まで送り「ジャァネ、バイバイ」と言った瞬間!
キスしようとしたらヒョイとよけられ「今度、デートやりなおそうね。」と言って帰って行きました。
その後当然つき合うことになりました。
夜になって親父が帰ってきてからもワァワァなりましたが、何とかウヤムヤにしてしまいました。
とまぁ、こんな感じで事態は終結していきました。
んでトラウマって言わないかもしれないけど今でもヤンキー、チンピラ、893系を見るとなんか
体がスッと寒くなるんですということでした。
了
命があってよかったのぉ。
同じ目にあって、東京湾あたりに沈んでる香具師も
居るだろうからね。
引用元: ・見てしまった!!すごい修羅場16