昭和が終わって平成が始まった頃の話
その頃俺は地元の小学校を卒業しそこそこ遠い私立中学に進学した
私立でまあ進学校と言ってもおかしくはない所だった
昭和が終わったばかりのその時代、その中学の常識は「睡眠時間=サボり時間」だった
「夜だからといってたくさんサボる(睡眠する)やつは弛んでる」「睡眠は少なければ少ないほどその分勉強できる」というのがまず原則で
一流大学に入るには膨大な時間勉強しなければいけないという校風がまず課された
長く(六時間以上)寝る奴は『お昼寝大好きのび太くん』みたいな扱いだった
入学直後にまず「勉強の習慣をつける」為に合宿へ連れて行かれ
午前三時睡眠〜七時起床の勉強漬け三泊四日を過ごした
「この合宿での勉強内容は微々たるものだ。それよりこの生活習慣を身につけろ」と言われたのは覚えている
実際同級生の皆もその生活習慣を身につけ合宿の後もそのくらい勉強していたと思う
そんな感じで同学年12歳のガキ約二百人は四月から四時間睡眠で中学時代が始まった
ガキだから学校や先生のいう事は絶対に正しいと思っていたし
そもそも世間も「四当五落」とか普通に言っていた時代だったから誰一人変だとは思わなかった
今と違ってネットはなく学校の方針がそういう雰囲気だともちろん親もそれに従う
深夜ゼロ時にどうしてもしんどいと布団に入ると「今日は休憩か?」とか言ってくるから起きて1時2時まで勉強せざるを得なかった
しんどいのは根性が足りないからで根性があればサボろう(睡眠しよう)なんて気は起きないはずだと言うのが学校の教えだった
基本的に2時まで勉強し6時頃起きて登校というのが流れだった
中高一貫の六年間のうち五年間くらいは殆ど何をやってたか覚えていない
一応卒業は出来たから登校はしていた筈だが
結局俺は三流大学に通ってそこで四年間ダラけてどうにか普通になった
全く勉強せずオタサークルの中でテレビエヴァとパソゲーの話ばっかりしてて殆どリハビリみたいな四年間だった
「眠い…つらい…→寝る」って回路を二十歳近くになってやっと脳の中に作った
大学の友達は今でも連絡を取るし結婚式にも出てもらったが中高の同級生たちは顔も名前も思い出せない
(というかそもそも元々覚えてすらいなったのかもしれない)
あの同級生たちは結局どこの大学へ行って今どうなっているのか全く分からない
あの生活と勉強習慣を身につけたまま官僚とかエリートビジネスマンになれたんなら何よりだがどうなんだろう
なんで今思い出したかと言うと自分の子供が小学校に行き始め
その流れでその私立中学がまだ中一年度初めの「合宿」を行っているらしいと耳にしたから
流石にこの時代「合宿」の内容は変わっているとは思うがひょっとして変わっていないのかも知れない
まあ一流エリートってのはそういう所を生き延びたやつがなれるのかもなあ
「そういう所」へ行ってエリートになれなかった子がどうなるかは身に染みて分かったから
自分の子をそこに入れようとは思わないけど
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