私…24歳、会社員
彼…25歳、会社員
ある日、仕事でであい系サイトをチェックしていると、【写メランキング☆】とやらの4位辺りに見慣れた顔が…。
いつもよりその一重の亀田こうきみたいな目を見開いているのと、見覚えのあるはずの分厚い唇が田中美保のようなアヒル口になっているのを考慮しても、紛れもなく同棲中の彼だった。
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身長172
マスコミ関係
クリスマスまでに彼女ほしいよ~(><)
メール待ってます☆
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ちょ、あんた私より身長低いから170以下のはずじゃあ?
いやいや、マスコミっつってもちげーじゃん…。
それになんだこの顔は? このアヒル口はなんだ? キメ顔なのか?
言いたいことは色々あったけど、見た瞬間の衝撃が尾を引き、どうすれば自分の気持ちを落ちつかせられるか、を考えた。
その結果、私に出来ることはただひとつだけだ、と決意し、準備するに至った。
このチャンス逃すものか。
私はすぐさま彼が脱ぎ捨てたジーパンのポケットをまさぐり携帯を見つけ、必氏の形相でネット履歴に目を巡らせた。
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俺、クリスマスに撮影で大阪行くんだよね。だからそのときに会おうよ!
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ほんまぁ?嬉しぃ(//∀//)撮影て芸能人?かっこぇぇゎぁ(≧▼≦)
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俺はCM制作会社だよ。だから芸能人は普通に会うよ(^^)v
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すごぉぃ!ぁたしはカフェでバイトゃんかぁ、ぅらゃましぃ!
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ちょあんた、その時期に大阪に撮影は嘘じゃねえよ、嘘じゃねえけどさ、CM撮影じゃなくて素人ナンパモノ大阪編☆だろがよ。
それにこの相手女性、写真見る限り完全にサクラじゃねえか…。
リアルなやり取りを見て全身の血の気が引くのを感じたが、手つきだけは冷静に、元のポケットに元の角度で、元の向きに携帯を戻した。
「明日は早いからもう寝るわ」
のんきな欠伸声で彼は布団に潜りこんだ。
翌日、私は例のサイトに社用携帯から登録した。
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代官山で美容師アシスタントをゃってる、21歳のさくらってゅぃます(*^_^*)
写メランキングの○○さんを見て、元カレにそっくりでびっくりして、メール送っちゃいましたo(^-^)o
ちょぉかっこぃぃですね☆
カノジョさんぃなぃんですか(*_*)?
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彼に、「さくらちゃん」からメールを送ったと同時に、「私」からも、今日のご飯どうする?というようなメールを送った。
ものの5分で、デスクに置いた携帯のひとつが鳴った。
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初めまして!メールありがとう!元彼に似てるんだ(^o^; 俺は仕事が忙しくて半年彼女なし…クリスマス寂しすぎるよ(;^_^A
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結局「さくらちゃん」と彼は数往復のメールをしている間、「私」へのメールは返ってこなかった。
翌日も彼は「さくらちゃん」とのメールを楽しんだ。
やれ休日は何してるだとか、やれ誰に似ているかだとか、同棲していても生活スタイルが合わないからか、「私」とのコミュニケーションは義務的なものだけだった。
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さくらちゃんの直メ知りたいな!だめ?会いたくなっちゃったよ(*^_^*)
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私は、キター! 釣れたー! と興したのも束の間、自分の恋人が2日メールしただけの顔もパーソナリティも知らない相手と会いたい(行いしたい)と申し出たことに、えずいた。
今日誕生日の私が
支援
それはそれは…(´;ω;)つ
誕生日は、おめでとうございます!
最後です。
「あのさ、最近やたらトイレにまで携帯持ってってるけどなんなの? 浮気してんの?」
その日の夜、彼にそう尋ねると、彼はわざとらしい程のきょとん顔(へ? 何言ってんのこいつ? 顔)をして、くだらねー! そういうこと言うから重いって言ってんじゃん、と吐き捨てた。
と、その一方で、「さくらちゃん」のメールが届く社用携帯は、バを鳴らしていた。
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直メは○○○だょ☆
こっちにメールしてね(^m^)会うのたのしみっ♪
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そう送ってから二日後、早々に、彼と「さくらちゃん」は会うことになった。
もうえずくことはなくなった。
むしろ興して胸が躍っている。
明後日、彼と「さくらちゃん」は会うんだ……。
待ち合わせ場所は渋谷のTSUTAYA前。
彼が着く前に私は到着し、彼が来るのを隠れて待った。
数分後、見覚えのある姿を雑踏の中で確認すると、そのまま背後に周り、「○○さん♪さくらです」と肩をつついた。
彼は振り向いたと同時に、そのまま崩折れた。
私が、腰を抜かすってこのことか! と初めて人が目の前で腰抜かすという状況に感動しているとき、彼は涙声で、「もう、ダメじゃん~…何もかも見られたら…ダメじゃん…」と言っていた。
みなさん修羅場を「引き起こされる」側ですけど、同じ浮気の被害者という立場で修羅場を「引き起こす」側になった、一例でした。
彼とはその後1年で別れました。
今では笑い話で、最近顔もよく知らないパーソナリティも知らない、ただ挿れただけの女性との間に子どもが出来、結婚するはめになった彼とよく飲みに行っては、この話を酒の肴にしています。
おお…ありがとうございます…。
乙でした!
「重いんだけど」っていう開き直り方が他人ながらムカつきました。
既婚者の元彼と飲みに行く神経もわからん。
同意。
元カレも貴方もどちらもずれてるよ。
1年弱、物理的に付き合わざるを得なかったのです。
同棲していたし、何よりすぐにでも引っ越し! て程のエネルギーも湧きませんでした。
でもまあ、ズレてることは確かかもしれませんね。
憎むより先に、彼をドッキリに仕掛ける作業に興していましたから。
「本当の意味での出来ちゃった婚」をした彼を見て、やっぱり人って、大人にはなれても変わることは出来ないんだなって思いました。
引用元: ・◇修羅場◇part78