俺のせいじゃないのに、居た堪れない気持ちになって二度と同窓会には出まいと誓った。
まず、元婚約者になった理由。
元婚約者は高校の同級生だった。
高校二年の時につき合い始め、俺は大学進学で上京、彼女は地元で就職、遠距離恋愛だが上手くいっていた。
俺は首都圏で就職を決め、彼女は俺との結婚を機に地元の会社を退職して上京というとこまで決まっていたんだが、そこで別の男に引っ攫われた。
同じ職場の先輩で、地元でも有名な地主の息子が「そんな貧乏な男よりも、代々地主で金持ちな俺の妻になれよ」と口説き、元婚約者も贅沢できそうみたいな感じで転んだ。
別れる時の話し合いで「あなたと彼とは身分が違うから」って言われたw
まだ式場の予約とか正式な婚約もしていなかったし、二十年も前の話だ。
弁護士に婚約不履行で訴えるなんて常識もなかった。
頭にきた俺は「じゃあな! 二度と顔を見せるな!」と啖呵を切って別れた。
それ以来二十年、一度も地元には戻っていない。
こっちで一緒になった嫁と両親は事情を察して、年に一度孫に会うために両親が上京する事を許してくれたくらいだから。
狭い地元に戻ると、必ず地主のお坊ちゃまに出会ってしまうからだ。
俺は別れてから二年ほどで吹っ切ったが、元婚約者は大変らしいという話を両親から聞いていた。
確かにその家は地主で金持ちではあるが、物凄くケチらしい。
相続税で不動産を切り売りしないで済むように金をケチケチ貯めているそうだ。
田舎なので削れない付き合いもあるから、元婚約者は共働きで、旦那、ウトメ、大ウトメ、その上の婆さんも元気らしい。
仕事に、家事に、育児に、多少の介護もあるから、昔は綺麗だったのに目に見えてやつれてきたそうだ。
テンプレの嫁苛め、嫁いだ二人の義姉は度々子供を連れて帰宅、コトメ子の面倒も見なければいけない。
コトメ二人も嫁苛めに参戦、元婚約者は娘を二人産んだ。
はい、畜生腹攻撃決定です。
元婚約者の両親も現状は知っているものの、地主の家に文句など言えない。
俺の地元は、そういうクソ田舎なのです。
つまり元婚約者は騙されたわけだ。
俺は同情する気にもならないけどw
ここで一旦切るか。
あとはわかるな?
元婚約者はわずかな手切れ金で追い出され、娘も使い道があるからと奪われた。
普通に裁判やれば元婚約者が勝てそうな気がするんだが、そこはその地元で歴史のある地主の家。
議員だの弁護士にお知り合いがおり、元婚約者もその家と争うと地元に居づらくなる。
元婚約者の父親が老後のために定年まで勤めあげたいからと、元婚約者に争わないでほしいと言ったみたい。
元婚約者の結婚生活は十五年ほどで終わった。
そのあとは精神を病み、心療内科に通いながら何とかアルバイトをしているそうだ。
そんなとても楽しい故郷なので、そこで行われる同窓会は遠慮していたんだ。
それでも今回は何とかと頼まれ、元婚約者も出席しないって聞いたからなぁ。
出てみたら、いきなりサプライズで笑ったわ。
悲劇のヒロイン(元婚約者)と二十年ぶりに結ばれる王子様(俺? 随分とおっさんな王子様だな)の感動秘話って事に、一部の出席者達の間ではなっていた。
同調者は、元婚約者と特に仲良くもなかった、今はニート女とサイマーで離婚されてフリターになっていた女。
「元婚約者ちゃんは色々と大変な目に遭ったから、俺君がここで結婚を申し込んで当たり前」
「私達にお祝いさせて!」
「俺君、私を待っていたんだね」
百六十センチ、百二十キロ(推定)のニート女(朝青龍似)、夜の蛾みたいなケバイフリータ女、いまだに心療内科で治療中、まるで貞子のようになってしまった元婚約者(貞子って、生前は美人だったな……)の脳内感動エンデイングを聞かされ、俺は同窓会を途中で逃げ出した。
逃げ出してよかった。
その境遇自体には同情しないでもないけど、元はお前が選んだ選択肢なのに、ゲームでセーブしたところからやり直せると思っている元婚約者、それに同調するドリーマー達の神経が理解できない。
引用元: ・その神経がわからん!その19
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この世にそんなもんはない
練習しないでホームラン打てるやつは天才か神に認められた豪運だけだ
だから常に頑張って生きるわけだ